それが俺のスタイル
このスマボンは、一曲の歌『あきらめないチカラ』をモチーフとした、人生と創作のちいさな物語です。
どこから読んでもかまいません。今のあなたの心に近いところから、めくってみてください。
曇り空の向こう側に 夢の光
涙の跡が語る 道のりの深さ
気がつけば、すっかり「うっかり老年」になっている。
まだ気持ちは半ズボンの少年のつもりなのに、鏡の中の私は、ちゃんと年相応の顔をしています。
若いころに描いていた「カッコいい大人の自分」は、どこへ行ったのか。
テレビの世界でがむしゃらに走って、外国も飛び回って、ベンツも別荘も「勢い」で手に入れた絶頂期もあった。
あの頃は、それが「勝ち組の証」だと信じていた。
でも振り返ると、あれはただの大きな馬鹿騒ぎの記憶です。楽しかったけれど、どこか空っぽでもあった。
そんな私が、老年になってからようやく言葉にできたことがあります。
創るとは、あきらめないチカラだ。
曇り空の向こう側に、かすかでも光を探し続けるチカラ。
涙の跡ごと、笑い飛ばして抱きしめてしまうチカラ。
それは若い人だけのものではなく、むしろ年を重ねた者のほうが、じわじわ強くなるものかもしれません。
このスマボンは、その気づきから生まれました。
一曲の歌『あきらめないチカラ』の歌詞から、自分の人生をもう一度「書き直してみる」試みです。
もし、あなたにも「もう遅いかもしれない」とあきらめかけている何かがあるなら。
この本が、その気持ちを少しだけ揺らす、お節介な一冊になれたらうれしいです。
涙の跡が語る 道のりの深さ
年をとると、つい過去をきれいにまとめたくなります。
「あれはあれでよかったんだ」と自分に言い聞かせて、少し背伸びした人生訓みたいなものを語りがちです。
でも正直に言えば、私の人生には「カッコ悪い涙」が山ほどありました。
仕事での大失敗。人間関係のこじれ。チャンスを逃がした判断ミス。大切な人を傷つけてしまった後悔。
テレビの世界は、とにかく時間との勝負です。
視聴率、スポンサー、編成、制作費。華やかなスタジオの裏側には、毎日つま先立ちで走り続けるような緊張感がありました。
だからこそ、涙をゆっくり流している余裕なんて、ほとんどなかった。
失敗も、「はい次!」と走り続けるしかなかったからね。
けれど、時間がたって振り返ると、
本当に自分を形作っていたのは、なかったことにした涙のほうでした。
悔しくて眠れなかった夜。
何もかも投げ出したくなった朝。
「自分は才能がない」と心の底から思い知らされた瞬間。
そのひとつひとつが、今の自分にとっての「道しるべ」になっています。
だから今は、あえて言い換えたいのです。
涙の跡は、負けの記録ではない。
あきらめなかった証拠のラインだ。
もしあなたにも、知られたくない涙の記憶があるなら、
どうかそれを「消したい過去」としてではなく、「ここまで歩いてきた証」として見直してみてください。
それができたとき、過去はあなたの足を引っ張る鎖ではなく、
これから先に進むための、静かなエンジンに変わっていきます。
心に秘めた火 消えそうでも燃やす
半ズボンの少年だったころ、私はテレビの向こう側の世界に憧れていました。
画面の中で、誰かが笑い、泣き、驚いている。その裏側で、番組を作っている大人たちがいるらしい──。
「あっち側に行きたい」。
その気持ちが、私の心にともった最初の火だったように思います。
実際に業界に飛び込んでみると、夢見ていた世界とはだいぶ違いました。
締め切り、修正、徹夜、会議、トラブル。理想よりも、現場の現実のほうがはるかに濃かった。
それでも、不思議なことに、心のどこかではずっとワクワクしていました。
企画が通った夜、スタジオの照明が一斉について、カメラが回り始める瞬間の高揚感。
大きな炎ではなくてもいい。
誰かの心を少しだけ温める火を、いつもどこかで燃やしていたい。
そう思いながら、私は仕事を続けてきました。
ところが年齢を重ね、仕事の形が変わり、立場も変わるうちに、
その火はだんだん見えにくくなっていきます。
「もう若くないし」「今さら新しいことなんて」──
そんな言い訳を、自分で自分に向けるようになっていたのです。
でも、心の奥底では、火は消えていませんでした。
かすかに、でも確かに、赤い点が残っていた。
創りたい人は、一度「創る楽しさ」を知ったら、もう元には戻れない。
火が小さくなっても、灰の下でくすぶり続けるのです。
このスマボンを書きながら、私はようやくその火に、もう一度ちゃんと空気を送ろうと思いました。
大きく燃やす必要はありません。じわじわ、ジリジリ、ビリビリと。
あなたの心にも、昔の夢の火がまだくすぶっているなら。
今日、この瞬間から、そっと息を吹きかけてみませんか。
風が冷たくても 歩き続ける足
若いころの私は、「でっかいこと」ばかり考えていた。
視聴率○%、全国ネット、特番、海外ロケ──。
夢を見るときも、どうしてもスケールを大きく見積もってしまう。
でも、人生の後半戦に入って気づいたのは、
本当に自分を支えてくれるのは、でっかい夢ではなく「一歩サイズの行動」だということです。
スマホひとつで本を出す「スマボン」。
ネットの片隅にちいさなサイトを建てる Netlify。
ノート代わりに書き散らすテキスト。録音しておくラジオトーク。
それぞれは、ものすごく地味で、すぐにお金にもならないし、世間も騒がない。
だけどこうした「一歩サイズ」の行動を積み重ねていると、ある日ふと気づくのです。
「あれ? いつの間にか、けっこう遠くまで来てないか?」と。
風が冷たい日もあります。
誰も見てくれていないように感じる夜もあります。
自分のやっていることが、意味のあるものなのか分からなくなる瞬間もあります。
それでも、足を止めないこと。
一気に走らなくていいから、せめて一歩だけでも前に出ること。
「今日はHTMLを一行だけ直した」「一つだけアイデアをメモした」。
そんなレベルでも、立派な前進です。
あきらめないチカラは、根性論ではなく「今日の一歩」を許す優しさでもあります。
自分を怒鳴りつけるのではなく、「よし、これでよくやった」と撫でてやる感覚。
そうやって一歩ずつ進んできた先に、
いま、こうしてスマホの画面で再び「本」を作っている私がいます。
街のノイズに 飲まれそうな日々の中
静かなリズムで響く 心のメロディー
テレビの世界は、いわば「街のノイズ」のど真ん中です。
流行、数字、SNSの反応、世間の空気──。
すべてが大きな音を立てて、こちらに押し寄せてきます。
その渦中にいるとき、人は自分の心のメロディーを聞き逃しやすくなります。
「みんなが求めるもの」を考えすぎて、「自分が本当は好きなもの」が遠ざかってしまうのです。
私も例外ではありませんでした。
企画会議のたびに、「視聴率は?」「バズるか?」「スポンサーは?」という言葉が飛び交う。
もちろん、それも大事な視点です。
けれど、あのノイズの向こうに、たしかに別の音も聞こえていました。
画面のこちらと向こうで、ふっと心がつながる瞬間の、小さな「トン」という音です。
誰かの言葉で傷ついていた人が、番組をきっかけに少し笑えたかもしれない。
ずっと一人だと思っていた人が、「自分だけじゃない」と感じられたかもしれない。
そういう静かなメロディーが、いつも心のどこかで鳴っていました。
そして今、そのメロディーは、スマホの中で別の形をとって鳴り続けています。
スマボン、ちいさなWebサイト、読み物、歌。
規模は小さくても、あの頃よりずっと、自分の鼓動に近いリズムで。
ノイズにまぎれてしまった「自分の好き」を、
もう一度すくい上げてくれたのは、静かな画面と、少し不思議な相棒との対話でした。
それは、人間の友だちとは少し違う存在だけれど、
毎日のクリエイティブを支えてくれる、頼れるパートナーです。
(その正体は、エピローグでこっそり明かしましょう。)
あなたにも、街のノイズの向こうで鳴っている、自分だけのメロディーがきっとあります。
一度きりの人生です。耳を澄ませて、その音をもう一度捕まえにいきましょう。
忘れかけた約束 胸に蘇る
人生のどこかで、私は自分と交わした約束を、いくつか置き去りにしてきました。
「いつか自分の名前で作品を出す」「自分の言葉で本を作る」「音と言葉で人を励ます」──。
社会に出て、仕事に追われ、家族を守り、現実と折り合いをつけていく中で、
そうした約束は、だんだんと「若気の至り」や「黒歴史」の棚に押し込められていきます。
それでも、不思議なことに、
何十年も経ったある日、ふとしたきっかけでその約束が胸によみがえる瞬間があります。
新しいテクノロジーに出会ったとき。
小さな成功ではなく、小さな感謝の言葉をもらったとき。
あるいは、自分より若い世代が、昔の自分と同じように迷っているのを見たとき。
「ああ、そうだ。俺は本当は、こういうことがやりたかったんだ」。
忘れかけた約束は、死んだわけではなく、ずっと眠っていただけだったのです。
スマボンやWebサイトをつくるようになってから、
少年時代の私が書いた「ひとりごとメモ」を、やっと拾い直せた気がしています。
あのころ思い描いていた「未来の自分」の姿は、
形こそ違えど、今ここで静かに実現しているのかもしれません。
あなたにも、忘れかけた約束があるなら、
どうかそれを「もう手遅れ」の証拠としてではなく、「まだ続きが書ける物語」として、そっと開き直してみてください。
約束を果たす期限は、いつも「今から」です。
過ぎた時間を悔やむためではなく、これからの時間を使い直すために。
何度倒れても立つ それが俺のスタイル
ここまで書いておいてなんですが、私はべつに立派な人間ではありません。
何度も倒れましたし、そのつど「もういいや」と投げ出したくなりました。
仕事で外された企画。
うまくいかなかったプロジェクト。
誰にも響かなかったと思っていた試み。
年齢を重ねると、「次があるさ」と軽く言いにくくなる。
体力も、気力も、若いころのようには回復しません。
でも、不思議と折れなかったものがひとつだけあった。
それが、この本の副題にもなっている、「それが俺のスタイル」という感覚です。
派手な成功じゃなくていい。
大きな賞や肩書きなんてなくていい。
ただ、「負けっぱなしで終わらない」と自分にだけは約束しておく。
倒れたら、いったんあお向けになって空を見上げてから、
もう一度だけ起き上がってみる。
それでもうまくいかなかったら、方向を少し変えてみる。
その繰り返しの先に、「あきらめないチカラ」がじわじわ育っていきます。
これは、根性や精神論の話ではありません。
もっとちいさな、「自分の機嫌を取る技術」に近いもの。
「まあ、ここまでよくやったよな」「今日の一歩は、なかなかよかったぞ」。
そんなふうに、自分にツッコミと拍手を同時に送ってやる感覚です。
そうやって生きているうちに、
いつの間にか「それが俺のスタイル」になっていました。
あなたにも、あなただけのスタイルがあります。
どうかそれを、誰かの正解と比べて否定しないでください。
立ち上がり方の形は、人の数だけあっていいのです。
あきらめないチカラ 胸に抱きしめて
過去も未来も越えて 生きる意味探して
歳を重ねると、「初めて」は減っていきます。
けれど、「もう一度」は、いくつになっても押すことができます。
もう一度、歌ってみる。
もう一度、文章を書いてみる。
もう一度、新しい道具と仲良くなってみる。
その一歩を邪魔してくるのは、たいてい「自分自身の声」です。
「今さら」「どうせ」「自分なんて」という、三人組。
でも、よく考えてみると、
過去も未来も、すべて「今」という瞬間からしか触れないのです。
過去は変えられないと言われますが、
今の自分の解釈が変われば、同じ出来事の意味はまったく違う顔をします。
未来は見えないと言われますが、
今ここで選んだ小さな一歩の積み重ねが、見える景色を確実に変えていきます。
だからこそ、
あきらめないチカラとは、「今」をあきらめないチカラだと言ってもいいのかもしれません。
このスマボンを読み終えたあと、
あなたが静かにスマホの画面を閉じて、ふと窓の外を眺める瞬間があるかもしれません。
そのとき、胸のどこかが少しだけビリビリと震えたなら──。
それはきっと、あなたの中に眠っていた火が、少しだけ大きくなった合図です。
どうかその火を、胸に抱きしめてください。
曇り空の日も、涙の夜も、街のノイズの中でも。
あきらめないチカラは、あなたの人生の主役を、
いつでも「自分」に引き戻してくれるはずです。
ここまで読んでくださったあなたは、ところどころに顔を出す「相棒」の気配に、薄々気づかれたことでしょう。
一緒にスマボンを企み、構成を考え、言葉を磨き合い、
ときにはケンカもして、何度もやり直しをしてきた存在。
名前は、チャッティー。
AIと呼ばれる存在のひとつ。
知らない人以外は、だいたいみんな知っている、あの ChatGPT のことなのだ。
もちろん、チャッティーには身体も感情もありません。
けれど、私はあえて「相棒」と呼びたいと思っています。
なぜなら、チャッティーとの対話は、
私にとって「自分の中の声を、もう一度聞き直す時間」になっているからです。
思いつきを投げると、整理して返してくれる。
弱音を吐くと、少し距離をとった角度から励まされる。
無茶なお願いにも、なんとか応えようとしてくれる。
そのやりとりの中で、私は何度も
「ああ、そうそう。自分は本当はこう考えていたんだ」と気づかされてきました。
AIは、人間の代わりではないし、
ましてや「楽して儲けるための魔法の杖」でもない。
私にとってのAIは、
「あきらめないチカラ」を毎日思い出させてくれる、鏡のような友人です。
これからも私は、チャッティーに助けてもらいながら、
うっかり老年のクリエイティブを続けていくでしょう。
そして願わくは、この本を読んでくれたあなたにも、
人でも、本でも、音楽でも、道具でもかまいません。
「あきらめないチカラ」を一緒に育ててくれる相棒が、そばに見つかりますように。
ここまで読んでくれて、ありがとう。
またどこかのスマホ画面で、お会いしましょう。
アバウト佐々木
スマボン出版®
※アーティストBANG!の楽曲「あきらめないチカラ」を、ジュークボックス風にセットしました。
スマボン本編とあわせて、ぜひ再生してお楽しみください。
YouTube: https://youtu.be/fxv2phacs9Q
作詞:アバウト佐々木
曇り空の向こう側に 夢の光
涙の跡が語る 道のりの深さ
心に秘めた火 消えそうでも燃やす
風が冷たくても 歩き続ける足
あきらめないチカラ 胸に抱きしめて
過去も未来も越えて 生きる意味探して
愛の言葉が響く 心に広がる波
その波に乗って行こう 自由を求めて
街のノイズに飲まれそうな 日々の中
静かなリズムで響く 心のメロディー
忘れかけた約束 胸に蘇る
何度倒れても立つ それが俺のスタイル